web3ってよく聞くけど、私たちの生活に変化をもたらすのでしょうか?
結論から述べると、医療・看護において大きな変化を与えるので、私たちの生活にも変化をもたらすと言えます。
なぜweb3が医療・看護に変化をもたらすのでしょう?
それによって、どんな変化が起こるのでしょう?
先行事例をもとに、web3がもたらした具体的な医療・看護の変化と、そこから考察できる医療・看護の今後について、医療国家資格をもつ私が紹介していきたいと思います。
この記事はこんな人にオススメ!
・web3ってよく聞くけど、実際どんな変化があるのか分からない。
・web3って私たちの生活を変えるの?
・先行事例からweb3と医療・看護について知りたい。
そもそもweb3って?
「そもそもweb3をよく知らないんだけど・・・。」という方に朗報(?)です!
大前提として、web3は定義もハッキリとしておらず、ものすごく曖昧なので「よく分からない」が実は最も正しい反応だったりします。
そのため、今回はこの記事でもメインで登場するweb3用語「ブロックチェーン技術」「トークン」「DAO」について事前に誰でも分かりやすいように説明してから、本題の先行事例からみる、web3が与える医療・看護の変化と今後についてお話ししていきたいと思います。
「用語はもう知ってるよ~!」って方は、用語の説明は飛ばして読んでいただければと思います。
ブロックチェーン技術
デジタル上の取引履歴を1つの帳簿を使って、みんなで監視できるようにするシステムを作る技術です。鎖状に情報をつなげていくことから「ブロックチェーン」と呼ばれています。
これによって
1.みんなが見ているため不正ができない。
2.記録の改ざんが難しい。
3.みんなが共有しているため、停止しない。
といったメリットがあります。
トークン
デジタル上の引換券や、代わりの通貨のことです。
ポイントみたいなものなんですが、web3においては、代わりの効くトークン(ファンジブルトークン)と代わりの効かないトークン(ノン・ファンジブルトークン)があり、後者をNFTと呼びます。
今回の記事で紹介するのは「代わりの効くトークン」で、従来のポイントと違って実際にお金に替えられたり、他のトークンに替えられたりします。
DAO(分散型自律組織)
DAOとは、web3におけるコミュニティのようなものです。
今までのコミュニティと異なる点は
・リーダーのような大きな権力を持つ立場がおらず、参加者全員が平等な立場で組織が運営される。
・組織の意思決定は、投票によって行われる。
・インセンティブがある。
ことが挙げられます。
ネットでは様々な情報がありますが、今回の記事を読んでいただくにあたっては、簡単に上記のような理解で十分です。
先行事例からみるweb3が与えた医療・看護の変化と今後について
ここから実際にweb3が医療・看護にどのように活用されて、変化をもたらしたのかを海外の先行事例も含めてご紹介します。
そのあとに私個人の意見も含めて考察していきます。
①web3で個人が情報を持つことで、セキュリティ強化。
より良い医療・看護も受けられるように変化する?
web3の代表とも言える「ブロックチェーン技術」によって、医療・看護業界において最も変化の有望視されているのが「個人情報保護のセキュリティ強化」「個人が情報を持つこと」です。
このことに世界の中でもいち早く、医療とブロックチェーン技術に目をつけて導入に動いたのがエストニアです。
エストニアではデータが患者に属し、患者がアクセスできるように、ソフトフェアを導入しました。
また、ワクチン接種証明についてもブロックチェーン技術を用いることで、改ざんができないだけでなく、いつでも簡単に証明できるように進めています。
ワクチン証明にかかる人件費や時間をかけずに、人の行動の流動性を高められるので、国全体でみると大きな変化になるはずです。
これによって、エストニア人はデジタル環境を完全に制御し、自分のデータにいつでもアクセスできるようになりました。
また、誰がどのレベルでデータをアクセスするかまで、自分で管理することができるので、自分が見せてもいい相手にだけいつでも確認してもらうことが可能です。
本来であれば入院や診察などの際に、前の医療機関からの患者の情報提供書が必要です。
しかし、情報は個人が持っているので、前の医療機関からの情報提供が必要なくなるのです。
医療者側としては、緊急時でも迅速に患者の既往歴や内服薬を知ることができ、情報提供書のやりとりがなくなる分、スムーズな医療・看護の提供につながります。
エストニアと同じような管理方法になった場合、今よりも安全で個別性のある介入ができる、そして入院期間の短縮も図れるといったことに変化するのです。
②web3で健康になろうとすると、お金がもらえるように変化する?
トークンによって、新たな経済(トークノミクス)が生まれます。
実際の例でいくと、オーストラリアで生まれた、特定の靴で歩くとトークンが溜まる「StepN」というものがあります。
特定の靴で歩くと「トークン≒お金がたまる」サービスです。
いわゆるMove to Earn(以下M2E)と言われています。
運動と日光がもたらす体とこころへの良い影響は、みなさんも聞いたことあるのではないでしょうか?
具体的には、朝30分の外散歩で幸福ホルモン「セロトニン」の分泌、うつ病予防、睡眠の質工場、ビタミンD生成などなど、デメリットを探すほうが難しいぐらいです。
とはいえ、多くの人は「できれば運動したくない!」「めんどくさい!」と思っているのではないでしょうか?(私もです笑)
しかし、お金がもらえるとなると話は別です。
喜んで毎日2駅分ぐらいは歩くようになるでしょう。
M2Eでは「歩くことでトークンがもらえるなら歩こう!」といった、自主的な行動の変化を促されたのです。
このように、トークノミクスが成熟すると、今までではお金になり得なかった小さな行動の積み重ねがトークンに変換され、そのトークンがお金に変換できる経済に変化します。
医療においては、体の健康もこころの健康も予防が非常に大切です。
とはいえ、予防のために好きでもないこと、得を感じにくいことを続けるのは非常につまらないので長続きしないのが人間の性です。
これは、歩くことに限ったことではありません。
良質な睡眠をとることでトークンが得られる「Sleep to Earn」も実際にありますし、個人的にはこころの健康の維持・増進のために「Self-help to Earn」などのプロジェクトも作って行きたいと考えています。
どのようにマネタイズしていくかの課題もありますが、このようにweb3がもたらすトークノミクスは、医療・看護への変化も計り知れないものになるでしょう。
参考元:https://stepnofficial.medium.com/a-stepn-guide-to-phsyical-mental-and-social-health-4a4241093a2
③web3で孤独が減って、体とこころの健康も変化する?
健康と聞くと、体の健康ばかり気にしがちですが、こころの健康も非常に重要です。
特に新型コロナウィルス蔓延によって、人と人とのつながりが薄れ、メンタル不調を感じることもあったのではないでしょうか?
オンライン上で、つながりがもてることの重要性も浮き彫りになったタイミングなのではないかと思います。
web3では、DAOというコミュニティのような組織がありますが、これまでのコミュニティと大きく異なるのが「先導者がいない」「それぞれの個人が同じ目的に向かって自律して行動していく」「それによってインセンティブが得られる」という点が挙げられます。
医療の世界でも、同じ病気や障害で苦しんでいる方が集まって、それぞれのつらさや悩みを打ち明けたりすることで、お互いがお互いを支えあうことを「ピアサポート」と呼びます。
ピアサポートとDAOは非常に相性が良く、海外の論文では実際に論文に取り上げられており、今後も注目を浴びることが予測されます。(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2022.945830/full)
DAOの特徴である「非中央集権的」「一人ひとりが自律して目標に向かって行動している」「インセンティブがある」というところから、本論文の中ではピアサポートとして集まってきている方々にとって、単に悩みを共有して「仲間もいるから頑張ろう!」と思えるだけじゃなく、前向きに行動するための動機にもなることが書かれています。
支えあうだけではなくて、一緒に病気や障害と付き合っていく・乗り越えていくといった前向きな意識になりやすいため、よりポジティブなグループになることが期待されます。
これは、ピアサポートに限った話ではありません。
DAOによってよりマイペースに、程よい距離感で、インセンティブももらいながら、簡単に繋がれる未来が来るでしょう。
孤独が与える体とこころへの悪影響は広くしられていますが、DAOがそれを解決する一助になる可能性が高いと思っています。
まとめ
いかがでしたか?
web3は複雑で分かりづらく、情報の流れも早い一方で、変化を知って活用できれば大きなアドバンテージになります。
web3を活用した医療・看護については、世界でも新たな試みもみられており、今後も増え続けていきます。
ワクワクする未来に乗り遅れないように、忙しい医療者でも分かりやすい情報発信を心がけていますので、他の記事もぜひ参考にしていただければと思います。